2021年5月7日
|2021年5月10日
現在、生活のあらゆるところで活用されているIT技術。新型コロナウイルス感染症の影響によるニューノーマルへの激変に伴ってさらに身近なものとなり、今後も幅広い分野でITのニーズは高まっていくと考えられています。常に新しい技術が求められ進化し続けているIT業界について、今後の動向が気になる人も多いのではないでしょうか。この記事では、IT業界の現状や将来性、今後注目される技術や求められるスキルについて解説しています。
IT業界(情報通信産業)と言われる「インターネット・Web業界」「情報処理業界」「ソフトウェア業界」「ハードウェア業界」では、今後もITのニーズ拡大に伴う市場規模の拡大が見込まれています。しかしその反面、需要に伴う課題も多いのが現状です。IT業界の現状や課題についてみてみましょう。
IT業界は私たちの生活に大きな影響を与えており、現在の生活がIT技術によって成り立っていると言っても過言ではありません。総務省が行った「令和元年度 ICTの経済分析に関する調査」では、IT業界の国内市場規模は99.1兆円と全体の約10%を占めており、卸売業・小売業などを合わせた「商業(93.5兆円)」とあまり差がないことがわかります。スマートフォンの普及によるアプリやWebサービスだけでなく、今後もIoTやAIの普及、セキュリティ対策など、まだまだ求められる要素が多いことから、これからもIT業界の市場規模が拡大していくことが予想されます。
IT業界ではこれまでも人材不足が課題とされていましたが、少子高齢化問題やIT業界の急成長に伴う需要の拡大によって、さらにエンジニア不足が加速している状況です。経済産業省が行った「IT人材の需給に関する調査」では、2030 年のIT関連市場は最低でも16万人、最大で79万人もの人材不足になるという試算があり、とくに、IoT や AI を活用した「先端 IT 市場」では、2030年には27万人から55万人の人材不足が予測されています。そのため政府は、 ITやデータ分野を中心とした高度なレベルの教育訓練講座を「第四次産業革命スキル習得講座」として認定し、受講者に受講費用の最大70%支援する制度を設けています。
以前からIT業界の労働時間は他の業種と比べて長時間となる傾向があり、関係者とのコミュニケーション不足や残業の常態化が長時間労働の要因となっていると考えられています。厚生労働省が公表している「働き方改革支援ハンドブック」によると、全産業の年間総実労働時間の平均が1724時間となっているのに対し、情報通信業は1933時間となっており、年間で200時間強も労働時間が長いことがわかります。今後は現場での仕事の進め方や取引の方法を見直すなど、労働時間の短縮を目指した働き方改革への取り組みが必要です。
私たちの生活に欠かせなくなったITは、新型コロナウイルスの影響によってより身近なものになっただけでなく、業務の効率化や課題の解決策として、今後も幅広い分野での技術の発展が期待されています。IT業界の今後に将来性がある理由は次の3つです。
私たちの生活の中にIT技術が普及した背景には、新型コロナウイルスによる影響がかなり大きいといえます。新しい生活様式に求められる非接触に伴うテレワークやキャッシュレス化、巣ごもり生活に欠かせない通販サービスやオンラインサービスなどがすっかり定着しています。しかし、それと同時に、テレワークの阻害要因やオンラインでの行政手続きなど、さまざまな分野でデジタル化の遅れが課題として浮き彫りになりました。また、日本の企業では働き方改革への「IT投資」も増加傾向にあり、アフターコロナでも非接触の生活が続くと考えられていることから、社会や経済のデジタル化がさらに加速されることが予想されます。
経済産業省が行った「IT人材の需給に関する調査」によると、IT人材の需要は2020年には147 万人、2025年には169 万人、2030年には 192 万人と年々増加していくと予測されており、 IT関連市場の成長に伴ってIT人材の需要は高まっていくと考えられます。とくに、さまざまな業界でAIが導入され始めたこと、政府がIoTを推奨していること、IoTが普及することでより高度なセキュリティ技術の必要性が高まることから、これらに対応できる先端IT人材の需要が増加する可能性があります。
現在、ITは幅広い分野で活用されるようになり、その需要は年々高まっています。ITを活用することで業務の効率化が進み、生産性の向上や課題の解決などが期待できることから、医療、交通機関、農業、自動車といった分野でも導入されています。例えば、次のようなIT活用例があります。
・医療
医療現場では医師不足や高齢化社会に伴う医療費の圧迫が問題となっており、遠隔地へのオンライン診療(遠隔診療)やIT機器を用いたモニタリングなどが行われるようになりました。また、今後はAIによる診断スピードや正確性の向上、他の医療機関との検査データの共有や活用を可能にする医療データのデジタル化が期待されています。
・交通機関
スムーズに交通機関が利用できるICカードのほか、リアルタイムの運行情報を把握することが可能となりました。現在、国土交通省と経済産業省では、将来の自動運転社会の実現を見据え、「MaaS (マース)」などのIoTやAIを活用した新しいモビリティサービスの社会実装を目指す「スマートモビリティチャレンジ」に取り組んでいます。
・農業
ロボット技術やITの先端技術を活用した「スマート農業」では、農機ロボットの自動操縦による収穫作業やドローンでの農薬散布、ビッグデータ解析による栽培管理や栽培技術のデータ化、AIによる収穫予測や収穫の判断などが用いられています。省力化や大規模生産、品質の向上だけでなく、農家の人材不足の解決策としても期待されています。
・自動車
近い未来に実現する可能性があるとして期待されているのが「自動運転システム」です。まだ開発途中ですが、すでに一部の自動車には「自動ブレーキ機能」や自動で駐車する「プロパイロットパーキング」が搭載されています。また、自動運転や無線通信でつながる車「コネクテッドカー」などの先端技術の開発が進められています。
将来性のあるIT業界ですが、技術やサービスの発展と共に需要も目まぐるしく変化するため、常に新しい情報を把握しておく必要があります。今後求められる技術にはどのようなものが考えられるのでしょうか。ここからは、今後注目される技術について紹介します。
IoTとは「Internet of Things」を略したもので、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。今までインターネットにつながっていなかった「モノ」がインターネットを通じてクラウドサービスやサーバーに接続され、相互に情報交換をする仕組みです。
例えば、外出先からスマートフォンを使った家電製品の遠隔操作や、車の自動運転などが身近なものとして挙げられ、医療分野、農業分野への活用も進められています。これからはインターネットとは無縁であったモノ同士がネットワーク化されることにより、新たな価値が生み出され、暮らしがより豊かなものになるでしょう。
AIとは「Artificial Intelligence」を略したもので、研究されている歴史は長く、人間のように自ら物事を考え判断する技術であることから「人工知能」とも呼ばれています。また、ビッグデータは、近年のデジタル化やIoTの発展に伴い生成されている大容量のデジタルデータのことで、活用次第では得られる利益に大きく影響する可能性を秘めています。
AIの機械学習やディープラーニングの発展により、ビッグデータの管理や解析がスムーズに行われようになったことから、企業に有効な情報が手に入るだけでなくAI技術の精度の向上にもつながりました。今後もAIとビッグデータを活用した業務の効率化や自動化などが増えることが見込まれています。
XRとは「X Reality、Extended Reality」を略したもので、VR、VR、MRなどの画像処理技術で構成された、現実世界と仮想世界を融合する技術の総称です。
・VR
VRは「Virtual Reality」を略したもので、CGや3D技術などで制作された仮想の世界を、現実のように体験できる「仮想現実」のことです。従業員のスキル向上を目的としたVR教材や、VRを用いた遠隔会議システムなどで活用されています。
・AR
ARは「Augmented Reality」を略したもので、スマートフォンやヘッドマウントディスプレイを通して、現実空間にバーチャルな画像を重ね合わせた世界を体験できる「拡張現実」のことです。ゲームアプリやカメラアプリ、ショッピングアプリなどで活用されています。
・MR
MRは「Mixed Reality」を略したもので、専用のMRディスプレイを用いて、現実空間に3D CGの物体を目の前にあるかのように映し出すことができる「複合現実」のことです。医師の手術トレーニングや製造業の技術継承などで活用されています。
XRは、これまで主にゲームやエンターテインメントの分野で利用されてきましたが、今後は、教育や医療などの幅広い分野での活用が進むと考えられています。疑似体験をよりリアルに表現するためには大量の高解像度映像が使用されることから、「超高速・大容量・超低遅延」の特長を持つ5Gの普及が求められます。
5G(ファイブジー)とは、第5世代移動通信システム(5th Generation)略称で、携帯電話などの通信に用いられる次世代通信規格の5世代目であることを表しています。5Gには、「超高速・大容量の通信ができる」「信頼性の高い超低遅延での通信ができる」「多数の機器の同時接続ができる」などの特徴があります。例えば、超高速通信による4Kや8Kといった高解像度の動画を配信したり、多数同時接続によるIoTの活用ができたり、超低遅延による医療の遠隔治療を行ったりなどが可能です。
また、ローカル5Gは、携帯電話事業者が提供する5Gとは別に、企業や自治体などが自らが所有する建物や敷地内の限定された場所で利用できる無線システムのことです。ローカル5Gには、「Wi-Fiよりも広範囲の通信をカバーできる」「通信トラブルの影響を受けにくい」「「セキュリティが強化できる」といった特徴があります。例えば、IoTやAIを活用しているスマート工場のロボットやセンサーを無人で制御したり、危険な場所での作業を機械を使って遠隔操作で行ったり、外部のネットワークと完全に切り離して情報漏洩のリスクを回避したりすることが可能です。
DXとは「Digital transformation」を略したもので、デジタル技術が広がることで人々の生活がより良いものへと変化することを意味し、経済産業省の「DX推進ガイドライン」では次のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン (DX 推進ガイドライン) Ver.1.0
DXの具体的な取り組みの例としては、テキストデータの分析・要約・分類を自動化するシステムを導入して効率よくお客さまの声を可視化させたり、薬を飲む時間に合わせてLEDが点滅・スマホに送信するIoTモジュールを利用して服薬忘れを防止したり、事前注文アプリや店舗で簡単に注文ができるキオスク端末を開発して設置したりなどがあります。
しかし、企業の多くはDXへの取り組みが間に合っておらず、このまま既存基幹システムの老朽化やIT人材不足などの問題を放置すれば、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。この「2025 年の崖」を解決するためDX推進を求められているのが現状です。
参考:経済産業省 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
ノーコード(NoCode)とは、コーディングを全くせずにアプリケーションを開発することで、ローコード(LowCode)は、最小限のコーディングでアプリケーションを開発することを意味します。これまでのシステム開発には、専門的な開発知識を持っているエンジニアが必要でしたが、ノーコード・ローコードのシステム開発ツール用いることで、比較的簡単にシステム開発ができるようになり、コストや時間の削減、迅速にカスタマイズできるといったメリットがあります。DX 推進の課題を解決する手段のひとつとしても注目されています。
代表的なノーコードツール
・AppSheet
・Adalo
・bubble
代表的なローコードツール
・Magic xpa Application Platform
・kintone
・OutSystems
ひとことに「IT業界」といっても、その業種や仕事内容は多岐にわたり、求められるスキルも異なります。IT業界で活躍し続けるためには、新たな技術の登場や発展に伴う需要の変化を踏まえて、常にスキルを磨く努力が必要です。ここからは、今後求められるスキルやスキルアップを目指せる試験や検定について紹介します。
2020 年度から小学校プログラミング教育が必修となり、私たちの生活とプログラミングとの関係を学びながら、思考力、判断力、表現力といった「プログラミング的思考力」を身につける取り組みが行われています。即戦力となる高度なプログラミングスキルとまではいかなくても、ITやプログラミングに関する基礎知識を持っているのと持っていないのとでは、IT業界での評価が違います。
情報処理推進機構が実施している、ITを活用するうえで必要な情報技術に関する基礎知識や、情報技術力を証明することができる国家資格です。
情報処理推進機構が実施している、情報システムを安全に活用するため情報セキュリティが確保された状況を実現する人のための国家資格です。
情報処理推進機構が実施している、高度IT人材となるために必要な基本知識や技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた人のための「ITエンジニアの登竜門」とされている国家資格です。
Web関連のスキルで注目されているのが「UI」「UX」です。UIとは、ユーザーインターフェイス(User Interface)の略称で、「ユーザーとの接点」のこと。UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略称で「ユーザーの体験」を意味します。今後のwebサイトやアプリなどでは、見た目だけではなく、操作性や機能性、それによって得られる体験や経験を重視したデザイン力が求められると考えられています。
特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会が実施している、Webデザインの知識や技能、実務能力を評価する国家検定です。3級〜1級までのレベルがあり、Webに関わる者であれば3級から受験することができます。
特定非営利活動法人人間中心設計推進機構が実施している、商品やシステム開発におけるUXデザインなどについての専門性を認定する制度です。認定制度には、人間中心設計専門家(認定HCD専門家)、人間中心設計スペシャリスト(認定HCDスペシャリスト)の2つがあり、それぞれの受験条件には実務経験や実践事例が必要です。
幅広い業種でAIの実用化が急速に進んでいることから、AIと機械学習、ディープラーニングに関するスキルや、データを分析する上で必要な統計学は積極的に身に着けておきたいところです。さまざまな業務の効率化や高度化、自動化などをさらに発展させるために、AI機能である「識別」「予測」「実行」の精度の向上が期待されています。
・Python 3 エンジニア認定基礎試験・Python 3 エンジニア認定データ分析試験
一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施している、プログラミング言語「Python」の文法基礎や、Pythonを使ったデータ分析の基礎や方法などの専門知識を評価する試験です。
一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施している、ディープラーニングの基礎知識やAIの知識、実装能力などを検定する試験です。E資格は「JDLA認定プログラム」の受講終了が受験条件となっています。
一般財団法人統計質保証推進協会が実施している、統計に関する知識や活用力を評価する体系的な検定です。4級〜1級までのレベルがあり、それぞれの水準と内容で統計活用力を認定しています。
5GやIoTの普及によって、今後さらに身の回りのあらゆるものがインターネットにつながると予想されることから、モノや情報の安全を確保するためのより高度なセキュリティ技術が必要になると考えられます。家電のみならず、医療や介護、農業、自動車、物流など、さまざまな分野で情報セキュリティー技術や暗号化技術が重要となってきます。
一般財団法人ブロックチェーン技能認定協会が実施している、国内初の「エンジニアの知識と技術」に特化した体系的な技能検定です。ブロックチェーン技術や仮想通貨に関する知識の普及、より安心・安全な情報流通の推進を目的としています。
情報処理推進機構が実施している、「情報処理安全確保支援士」の国家資格取得を目指す試験です。ITの安心、安全な環境の確保やサイバーセキュリティ対策を担える人材であることを証明することができます。
新型コロナウイルスの影響により激変した生活様式や社会構造に伴って、さまざまなIT技術がより身近なものとなり、私たちの生活に欠かせないものとなりました。現在、医療、自動車、農業、教育などの幅広い分野でIT活用の場が広がっており、今後さらなるIT技術の発展により、あらゆる分野で需要が高まっていくと予想されます。とくに、AIやIoT、セキュリティに関する先端IT技術の活用が進むと考えられることから、「先端IT人材」の需要の増加が見込まれます。
常に新しい技術が求められ進化し続けているIT業界では、業界や分野で求められるスキルが異なり、技術トレンドが目まぐるしく変化します。IT業界の最新情報を把握したうえで、常にスキルを磨き続ける努力が必要です。
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