2021年11月22日
|2021年12月1日
システムエンジニアとプログラマーは、両者ともシステム開発に携わるITエンジニアに属する職業です。
広義でのエンジニアとは「技術者」のことを指します。たとえば、建築系エンジニアには一級建築士やCADオペレーター、機械系エンジニアには自動車エンジニアや船舶エンジニアがいます。各業界にそれぞれのエンジニアがいるわけですが、IT業界にもシステムエンジニアやプログラマー、サーバーエンジニアやネットワークエンジニアといったいろいろなエンジニアがいます。
しかし、システム開発での狭義に落とし込むと、「エンジニア」といえばシステムエンジニアを指すことが多いため、この記事ではエンジニア=システムエンジニアとして解説していきます。
システムエンジニアとプログラマーはよく混同されがちですが、役割はそれぞれ異なっています。簡単に言えば、システムエンジニアは「システムを設計する人」で、プログラマーは「実際にコードを書いてシステムを作る人」です。ここからは、システムを作るうえで、両者はどのように役割分担されているのか、分かりやすく解説します。
それぞれの役割を解説する前に、まずはクライアント企業からシステム開発を請け負って、完成するまでの工程を理解しておきましょう。
システムを作るには、主に要件定義・設計・開発・テスト、バグの修正(デバッグ)といった流れで進みます。
システム開発には、複数の工程があり、完成までに多くの時間がかかります。そのため、設計するのはシステムエンジニア、構築するのはプログラマーという風に分業してシステム開発を行っています。
システム開発はマイホーム建築にたとえられることが多いですが、システムエンジニアは建築士、プログラマーは大工といった関係になるでしょう。
システムエンジニア(SE)とは、システムを作る計画を立てたり、設計したりする職業です。クライアント企業と打ち合わせをし、自社の技術を組み合わせてどうやって課題解決をするのか考えます。出来上がったシステムの仕様書や設計書は、プログラマーに回します。また、完成した成果物の細かな調整や納品後のクレーム対応を行うこともあり、自社にとっては、クライアント企業との窓口のような存在です。
プログラマー(PG)とは、システムエンジニアが作った仕様書や設計書をもとに、仕様通りにシステムが動くようプログラミング言語を用いてプログラムを作る職業です。どのようにコーディングしていけば効率的なシステムが作れるのかを考え、クライアントの要望を機能として実現させていきます。コーディング後は、書いたソースコードが正常に動くかテスト・デバッグまで行うのがプログラマーの役割です。
システムエンジニアとプログラマーの役割について解説しましたが、続いては両者の詳しい仕事内容について解説します。仕事内容を比べれば、より2つの職種の違いが見えてくるでしょう。
システムエンジニアは、要件定義と設計、テストに関わるのが主な仕事です。それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。
要件定義とは、クライアント企業からの要望を聞いて、何のためにどのようなシステムを作るのかを大まかに決めることです。どのような機能を付けるか、そのためにはどれくらいの予算が必要か、何日までに作れるかなど、具体的な概要を詰めていく作業になります。
設計とは、要件定義を実現するには何をすればいいのか、プログラマーに向けて指示書を作ることです。設計には、基本設計と詳細設計があります。
・基本設計…要件定義をもとに、クライアント目線で必要な機能やインターフェイスを設計する
・詳細設計…基本設計をもとに、開発者目線でシステム内部を設計する
たとえば、家づくりに置き換えてみましょう。要件定義では、クライアントが望む間取りや設備、予算など聞き取りながら、大まかな家の完成イメージを共有します。基本設計は、要件定義で決めたことを具体的にどう実現させていくか考える工程ですので、図面や見積もりの作成で具体化し、打合せ→修正を繰り返しながら、完成像を詰めていきます。詳細設計では、基本設計から施工計画や強度計算、配線・配管といった計画を立て、各専門業者に指示を出していきます。
テストでは、プログラマーが作ったシステムが正しく動くかどうか、プログラマーとは違った目線でテストをします。
プログラマーはそれぞれが作った各プログラムのテストを行いますが、システムエンジニアはシステム全体が動くかどうかのテストを行います。システムに不具合があった場合、不具合を修正する道筋を立てるのもシステムエンジニアの仕事です。
クライアントと要件定義・設計の認識がズレてしまうと、せっかくのシステムが「作ったはいいが使えない」ものになってしまいます。作り損を防ぎ、開発作業を円滑に導くのがシステムエンジニアの腕の見せどころです。
主なシステム開発工程のうち、プログラマーは開発からデバッグまでを担当するのが仕事です。プログラマーといえば、プログラミング言語をパソコンに黙々と打ち込んでいるイメージがあるかもしれませんが、プログラミング言語を記述する、いわゆるコーディングという作業は、あくまでプログラミング作業の一部です。
プログラムを構築していく作業です。システムエンジニアが作った仕様書や設計書は、普通の言葉で書かれたものなので、まずはどのようにコンピュータへ命令して仕様を実現させていくのか、プログラムの設計を行います。コンピューターはプログラマーが命令した通りにしか動きませんので、システム完成時に抜けや漏れがないように、仕様書を細かく読み込むのも大事な仕事です。企業や案件によっては、システムエンジニアの仕事内容で説明した詳細設計から携わるケースもあります。
プログラムの設計段階で、無駄のない効率的な命令の組み合わせでプログラムを構築できるかどうかが、システムの品質やメンテナンスの良し悪しに関わってきます。プログラマーにとっては、自身の技術力が試されるでしょう。
設計後は、プログラミング言語を用いてソースコードを記述していきます。ここでの誤字脱字は、直接エラーにつながり、その後のテストやデバック作業時間に大きくかかわってきますので、集中力が求められる作業です。
テストやデバッグで、プログラムが正しく動くかどうか検証を重ね、システムを完成させます。システムを動かした結果、仕様書通りに動かなかったのであれば、プログラムを見直さなければなりません。その後、修正して再度テスト。検証と修正を繰り返しながら、納品物の品質を高めていきます。このような原因究明の作業をデバッグと呼びます。
テストとデバッグは、地味な作業の繰り返しのように感じますよね。しかし、プログラマーはきちんと動くシステムを完成させるのが責任であり仕事ですから、絶対に手を抜いてはいけない大事な作業です。
システムエンジニアとプログラマーの具体的な仕事内容を見てきましたが、求められるスキルにはどのようなものがあるでしょうか。ここからは、それぞれの職業で求められるスキルを理由とともに解説します。
システムエンジニアには、主にコミュニケーション能力や論理的思考、マネジメント能力が求められます。
■コミュニケーション能力
クライアントとの要件定義では、コミュニケーションが欠けてしまうと、初期段階で相手の要望を引き出せないことも。その場合、開発途中で「機能を追加して欲しい」といった急な仕様変更が発生してしまうこともあるでしょう。また、プログラマーを始めとした開発チームとの打ち合わせの際も、互いの認識が一致していないと、間違った方向で開発が進んでしまう可能性があります。システムエンジニアは人とのやり取りが多い職業なので、コミュニケーション能力は不可欠です。
■論理的思考
設計段階では、0からシステムを作っていくことになるので、逆算して物事を考える論理的思考力が役立ちます。要望の分析、必要な人員の確保、納期までのスケジュールの設定なども、システムエンジニアの仕事です。急な仕様変更といった突発的なトラブルにも対応できるよう、一歩先を見る思考力があると、より実現可能性の高い仕様書が作れるでしょう。
■マネジメント能力
システムエンジニアには、マネジメント能力も重要です。完成物を納期までに必ず届けるため、膨大なタスクを割り振り、開発スケジュールを管理しなければなりません。しかし、プロジェクトが大きくなればなるほど、動くお金や人、モノの量は増えます。トラブルに見舞われることもあるでしょう。そのため、マルチタスクで仕事が出来る能力は、システムエンジニアにとって重要なスキルの1つとなっています。
プログラマーには、主に論理的思考やプログラミング技術、コミュニケーション能力が求められます。
■論理的思考
システムエンジニアと同様に、プログラマーにも論理的思考が必要不可欠です。もし、コードにコンピュータが行なう処理を適当に詰め込んでしまうと、複雑で理解しづらいものになってしまいます。結果、エラーが発生した際に、どこを直せばいいか分からなくなってしまう可能性も。プログラマーには、物事を整理して、無駄のないシンプルなコードを書ける論理的思考がとても重要です。
■プログラミング技術
システムの構築は、どの案件にもいつも同じ技術が使われるとは限りません。さらに、IT技術は常に進化しており、新しい技術と古い技術が入れ替わることもよくあります。クライアントの要望を叶える効率的なシステムを作るために、その時々に応じて最適なコードを書く確かな技術力があるプログラマーは、市場価値が高いでしょう。
■コミュニケーション能力
プログラマーは一人で黙々と作業するイメージがあるかもしれませんが、システム開発はチームで行うので、実際はコミュニケーション能力も重要です。メンバーとの報連相がおろそかになってしまうと、大きなミスにつながりかねません。システムエンジニアとは違い、営業に近いコミュニケーション能力は重要ではないものの、メンバーと十分なコミュニケーションを取って開発を円滑に進められるのが理想的です。
システムエンジニアとプログラマーのどちらが稼げるのか気になる方も多いと思います。ここでは、両者の平均年収を解説します。
システムエンジニアの平均年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2019年度)によると、約569万円程度※となっています。
参考:厚生労働省『賃金構造基本統計調査 2019』(※きまって支給する現金給与額380.0千円×12か月+年間賞与その他特別給与額1129.0千円)
ただ、入社する企業や案件によっては、システムエンジニアでも一部プログラマーの仕事を任されたりすることもあります。仕事内容が変われば、年収も変動するでしょう。また、IT業界のエンジニア職はスキル重視の傾向があるため、経験年数によって年収が左右される可能性も考えられます。そのため、20代だともらえる年収が低く、残念に思うこともあるかもしれませんが、実績を積んでいくことで、年収アップが見えてくるでしょう。
プログラマーの平均年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2019年度)によると、420万円程度※となっています。
参考:厚生労働省『賃金構造基本統計調査 2019』(※きまって支給する現金給与額304.4千円×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額605.2千円
システムエンジニアと同様に、プログラマーも自社から与えられた役割や個々のスキルに応じて年収が左右される職業です。また、未経験者や経験の浅い技術者だと、開発実績のある技術者に比べて年収に大きな差が出ることもあるでしょう。平均年収は参考程度とし、自分ができることを増やしていくことが年収アップの鍵となるはずです。
システムエンジニアとプログラマーは、適性がないと長く続けるのが難しい職業です。自分にはどちらが向いているのか、2つの職業の適性の違いを解説します。
システムエンジニアに向いている人は、人と関わるのが好きで、かつモノづくりを楽しめる人でしょう。
クライアントと折衝する際、時には厳しい言葉を投げられることもあるかもしれません。システムを設計する際は、まだ見ぬ未来を予測して数値や表に起こす苦労を感じることもあるでしょう。しかし、開発したシステムでクライアントの課題を解決できたときの達成感を、直接クライアントと分かち合うことができます。コミュニケーションとモノづくりの苦楽を知る人は、システムエンジニアに適性がある人です。
プログラマーに向いている人は、新しい技術に興味があり、コツコツと勉強を積み重ねられる人でしょう。
技術変革が激しいIT業界では、プログラマーとして生き残るには自主学習が欠かせません。新技術への興味とそれを身に付ける自己学習の継続が無ければ、気持ちが折れてしまうことも。現役のプログラマーは、みな等しく努力を続けています。たとえ未経験からスタートしても、プログラミングが好きで、誰に促されずとも自ら勉強を続けていける人は、プログラマーに適性がある人です。
システムエンジニアとプログラマーの違いについて見てきました。その上で、ここではシステムエンジニアやプログラマーを目指す人からよく挙がる質問について解説します。
システムエンジニアやプログラマーは、文系でも就職できます。どちらも技術職のため、就職後に技術や知識を身につけられるかのポテンシャルを重視し、専攻は不問とする傾向が多いです。
文部科学省が行った調査によれば、大卒で「情報処理・通信技術者」に就職した人のうち、文系学部(人文科学・社会科学)を専攻していた人は、全体の約45%を占めていることが分かりました。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行った調査によれば、半数以上の企業が「新卒採用において文系理系にこだわらない」と回答したという結果が出ています。
参考:文部科学省『学校基本調査 / 令和2年度 高等教育機関《報告書掲載集計》 卒業後の状況調査 大学』
参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『IT人材白書2018』
文系理系は不問としている企業が多いことから、たとえ文系出身だったとしても、文系であることが不採用の理由に大きく関わることはないでしょう。
システムエンジニアもプログラマーも、どちらも将来性が高い職業です。
まず、今後IT化が進むにつれ、IT系エンジニアは、様々な場面で重宝されるでしょう。オンラインショップやSNSなど、普段私たちが何気なく使っているものには、プログラミングが活用されています。プログラミングといった専門知識を持つシステムエンジニアとプログラマーもまた、社会にとって欠かせない存在です。
次に、IT業界では、システムエンジニアやプログラマーなどのIT人材の不足を課題に挙げています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行った『IT人材白書2020』の調査によると、小規模から大企業まで、多くのIT企業がIT人材が不足していると感じているようです。
これらのことから、システムエンジニアとプログラマーのどちらかが優位というわけではなく、どちらも今後活躍の機会がさらに増える職業だと言えるでしょう。
たとえ未経験であっても、システムエンジニアやプログラマーになれる可能性は大いにあります。
IT業界では、IT人材が不足していて、人手不足を補うために未経験OKの求人を出す企業も少なくないです。ただし、未経験募集の選考では、応募者にITの基礎知識があると、今後の活躍を期待してもらいやすくなるでしょう。
就職支援付プログラミングスクール『学舎さくら』では、現場で使えるIT技術の知識を講習しています。高知県にあるプログラミングスクールですが、オンラインに特化しているため、全国どこからでも受講可能。さらに、講習後は就職サポートも行っています。受講料は完全無料ですので、気になる方はぜひWEB説明会でお会いしましょう。
ひと言で言えば、システムエンジニアは「システムを設計する人」でプログラマーは「システムを作る人」です。システムエンジニアは対面折衝が多く、プログラマーは開発作業に関わる時間が多い傾向にあります。未経験からキャリアをスタートすることができますが、どちらもIT系エンジニアのため、ITの基礎知識は不可欠です。システムエンジニアとプログラマーのどちらを目指すにせよ、興味を持ったのであれば、まずはプログラミング学習に触れてみることがおすすめです。
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