2021年5月6日
|2022年7月4日
この記事の目次
コロナ禍でテレワークという働き方を導入する企業が増えてきました。通勤時間の削減や、場所を選ばない働き方が注目される中で、自身の働き方を見直し、ライフワークバランスが整った生活を送るため、地方転職を検討されている方も多いのではないでしょうか。
実際、総務省の令和元年度のデータによると、Uターン・Iターンなど地方転職の足掛かりとなる地方移住の相談件数は、前年度よりも約17,600件増加したと発表されています。この結果からみても、地方への暮らしに興味を抱いている人が増えていることが分かります。
出典:『総務省 令和元年度における移住相談に関する調査結果(移住相談窓口等における相談受付件数等)』
地方転職は自分に合った選択なのか、また、都会から地方へ転職するにはどんな方法があるのか、事前に情報を確認して、希望に近い地方転職を実現させましょう。
当記事では、地方転職することで都会の生活とは異なるメリットとデメリットの紹介と、地方転職の求人の探し方や自治体の支援をご紹介します。
まずは、地方転職の際によく聞く言葉として、UターンとIターンについて確認しておきましょう。
地方の出身地を離れて都会へ移り住んだ後、就職や転職のために再び出身地へ戻ることを指します。例えば、高知県出身の人が東京で就職したあと、高知県へ戻ってきて転職するケースが該当します。
都会で生まれ育ち、そのまま進学や就職も都会だった人が、地方へ移り住み就職や転職をすることを指します。例えば、東京都から離れたことがない人が、高知県へ地方転職するケースが該当します。
地方には、都会では感じられないさまざまなメリットがあります。地方転職することで、自分の理想とする働き方や生活の実現に近づくかもしれません。
ここからは、Uターン・Iターンのメリットを4つご紹介します。
地方は都会と比べると求人数は少ないですが、労働者数の少なさから、経験のある分野なら即戦力として重宝される可能性が高いです。また、都会に比べてノウハウが追い付いていないことも多いため、いま自分が当たり前にやっている業務の仕組みが、地方企業では貴重なノウハウと捉えられることがあります。
地方は都会と比べて、家賃や物価が安い傾向にあり、生活費を削減できる可能性があります。特に差が目立つのが、家賃などの住居費です。
平成30年に総務省が発表した専用住宅の1か月当たり家賃・間代のデータによると、東京都が81,001円と最も高く、地方は高知県を例に挙げると40,255円です。最も低い県は鹿児島県の37,863円で、東京都と比べて約半分近くなります。
生活コストが抑えられれば、手元に残るお金が多くなり、貯金もしやすくなります。もちろん交際費や趣味に充てることもできるでしょう。
参考:『総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要』
都会では電車通勤が多く、満員電車のストレスを感じますが、地方では車通勤ができたり、家賃が安く職場の近くに住めたりと、毎朝の通勤のストレスから解放されます。
平成30年に総務省が発表した家計主の通勤時間の中位数を都道府県別にみると、神奈川県が45.6分と最も長く、次いで千葉県・埼玉県・東京都と40分台が続きます。地方の高知県は19.3分で、最も短いのは、鳥取県の16.2分という結果になりました。
通勤時間が削減されることで、プライベートの時間がとりやすくなり、趣味と仕事の両立などライフワークバランスがとりやすくなるでしょう。
参考:『総務省統計局 住宅・土地統計調査 / 平成30年住宅・土地統計調査 / 住宅及び世帯に関する基本集計 全国・都道府県・市区町村
地方では周囲との人付き合いを大切にする傾向があり、仕事やプライベートにおいても、人とのつながりができやすい傾向があります。都会に比べると世間が狭く、意外なところで人間関係がつながるのも特徴です。気候や地形、歴史によって培われた県民性によってもコミュニティの在り方は変わります。都会のドライな人間関係に不満を感じていて、もっと人と交流しながら生活をしたい方にとっては、温かみの感じられる環境になるでしょう。
地方転職には、メリットもたくさんありますが、一方で都会の働き方や生活から変化する、デメリットも存在します。「想像していた働き方や生活と違う!」とならないように、デメリットが自分の許容できる範囲内かどうか、事前に確認しておきましょう。
ここからは、デメリットとして主に3つご紹介します。
地方は都会よりも企業数が少ないので、求人件数が限られているため、職種や業種など仕事の選択肢は狭まる可能性があります。自分の希望通りの転職先を見つけようと思うと、長期化することも考えるため、早めのリサーチが必要です。地方転職は地方企業だけでなく、都会に本社のある地方営業所なども候補にしておくほうがいいでしょう。視野を広げて転職活動をすることが必要です。
地方では、一般的に都会に比べて賃金が低いため、年収が下がってしまう可能性があります。厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」の都道府県別の賃金をみると、賃金が最も高かったのは東京都で約38万円となっています。地方の高知県は約26万円で、最も低かったのは宮崎県の約23.5万円となっており、都会と比べて約14.5万円の年収差があります。
転職をすることで年収が下がるということに、抵抗を感じる方もいるでしょう。しかし、地方転職には生活コストが下がるというメリットがありますので、賃金が低くても生活にゆとりを作ることは十分可能です。トータルの収支と生活水準を考えて、事前にシミュレーションをしておきましょう。
参考:『厚生労働省 平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況 都道府県別』
スーパーや飲食店など商業施設は都会に比べると数が少なく、営業時間が短い、店舗まで遠いなど、地域によっては不便に感じる可能性があります。また、映画館やカラオケなどの娯楽施設がないところもあるでしょう。とはいえ、最近ではインターネットでのサービスが充実しているため、ネットショッピングや動画配信サービスなどを有効活用することで、物足りなさを補っていくこともできます。
都会に比べて求人数が少ない地方転職は、探し方が重要です。ここからは、都会とは違う地方転職へ向けた求人の探し方を解説していきます。
地域によっては民間の求人サイトを利用していない企業もあるため、希望地域の情報に精通しているサービスを上手に活用して、転職活動を進めましょう。
現在は、オンラインで転職の相談ができるサービスも充実しています。都会にいながら地方転職を成功させる仕事の探し方のヒントとして参考にしてください。
民間の転職サイトは、スマホなどでスキマ時間に簡単に求人検索することが可能です。自分の希望地域にはどのような求人がどのくらい掲載されているのか、事前調査の意味でも利用しましょう。
求人サイトは、受けたいサービスや希望する地域・企業規模によって、利用するサイトを選定することで、効率的に仕事が探しだせる可能性が高まります。
ここからは、民間の転職サイトを3つに分けてご紹介します。
地方の求人を検索する場合も、まずは求人掲載数の多い大手転職サイトを確認しましょう。大手転職サイトは、特に比較的規模の大きい企業の掲載が多いため、ある程度しっかりした企業に勤めたい方に向いています。地域など条件を絞り込んでいくことで、求人数が少なくなる可能性がありますが、地域の求人状況の把握や、今後の仕事の探し方の参考にもなります。
地域密着型転職サイトは、求人が都道府県別に掲載されており、ピンポイントで検索しやすいのが特徴です。主に地域の中堅企業や優良中小企業の掲載が多く、地域密着型転職サイトにしか掲載していない、独自求人が存在するサイトもあります。
地方企業には、募集条件としてスキルや経歴だけでなく「この地域で働きたい」など、人柄を重視してくれる企業もあるため視野を広げた活動が有効です。中小企業を狙うなら、地域密着型転職サイトの利用は、希望求人を見つけやすい探し方になるでしょう。
転職エージェントは、登録をすると担当者がつき、転職のプロがマンツーマンで相談にのってくれます。非公開の求人紹介や、履歴書・職務経歴書の添削、面接対策のサポートはもちろんのこと、面接の日程調整や各種手続きなどの手配も代行してくれます。
現住所から離れた地方への転職で様々な手続きがある中、寄り添ったサポートをしてもらえる転職エージェントは、利用してみる価値があるでしょう。特に、希望地域の転職に強いエージェントを選ぶのがおすすめです。
地方でも田舎の方になると、そもそも人口が少ないため、民間企業の求人サイトは利用せず、ハローワークにしか求人を掲載していない企業も多いので、地方自治体が運営している求人検索が必要でしょう。
また、地方自治体の就業支援制度では、地域の企業に精通した担当者が個別相談の上、応募企業の相談から面接対策まで行ってくれる窓口を用意しています。企業面接時の交通費を支給する地域もあり、地方転職をバックアップする取り組みが積極的に行われているのも特徴です。就業支援制度は、無料で利用できサポートも厚いため、地方転職を検討する方にとっては心強い制度です。内容は自治体によって異なるため、事前に確認し積極的に利用しましょう。
ここからは、地方自治体の制度を詳しく解説していきます。
各地に事業所を持つハローワークでは、インターネットサービスを利用して遠方の求人も検索をすることができます。特に、移住先として人口の少ない田舎を検討している場合は、求人を探す重要な窓口となります。ハローワークによっては「地方就職支援コーナー」という窓口があり、Uターン・Iターンを希望している方へ情報提供及び職業相談や紹介を行っています。
インターネットサービスは自宅でも求人検索が可能です。今までサービスを利用したことがない方も、まずは登録をしておきましょう。
参考:『厚生労働省 「地方就職支援コーナー」は次のハローワーク(公共職業安定所)に設置されています』
地方自治体主催で、Uターン・Iターン就職・転職フェアやイベントなどが、定期的に開催されています。民間の転職サイト主催のフェアと違い、企業側も参加しやすいイベントのため、情報発信があまり得意でない地方優良企業にも出会いやすいイベントです。
一般的なフェアでは、参加企業の説明会が行われ、企業採用担当者と話す機会があり、地域に密着した情報を得ることができます。直接担当者と話ができることで、具体的な仕事内容についての質問などもでき、転職後のイメージもつきやすくなります。また、応募や見学したい企業への会社訪問が可能な場合もあり、条件によっては訪問時の交通費が半額支給される場合があります。他にも、都会から地方企業に就職すると支援金がでるなど、特典や支援制度がある自治体もあるので自治体ホームページは必ず確認しましょう。
参考例:『一般社団法人 高知県移住促進・人材確保センター【※終了しました 参加企業約50社!『オンライン 高知就職・転職フェア2020冬』
相談会では、転職のタイミングや応募書類の書き方などを、個別に相談することができます。もちろん、現地企業の採用動向や具体的な求人情報も教えてもらえるので、不安なことや知りたい情報など気軽に相談しましょう
現在はオンラインでの面談など柔軟に対応しています。自治体によって対応範囲はさまざまですが、地域の企業に精通しているUターン・Iターンのサポートに実績のあるキャリアコンサルタントは、心強い味方になってくれるでしょう。応募書類の書き方などは、メールでも対応してくれるので、積極的に活用することをおすすめします。
参考例:『一般社団法人 高知県移住促進・人材確保センター【東京】5月22日(土)開催!高知県へのU・Iターン就職・転職個別相談会のご案内』
地域おこし協力隊は、地域住民のニーズに応えながら、地域の広報活動やサポート活動など、地域力の維持・強化を目的とした制度です。おおむね1年以上3年以下の期間、地方自治体の委託を受け、地域活動を行っていきます。期間中は活動費が支給されますが、待遇や活動内容は地域によって異なるため、各自治体の内容を確認しましょう。地方創生や地域に密着した活動に興味ある方は、新しい働き方の選択肢として検討してみるのもいいでしょう。
参考:『移住・交流推進機構 地域を変えていく新しい力 地域おこし協力隊』
都会のみならず、地方でも資格保有者は必要とされる人材です。高齢化が進み、子どもの数が減っている地域では、医療や教育・福祉関係は特に重宝されるでしょう。また、WEBデザイナーやプログラマーなどは、在宅ワークが可能な企業を選べば、居住地に関係なく従事することも可能です。
保有している資格やスキルを活かした転職活動はもちろんですが、資格やスキルを取得してから地方転職をする方もいます。
地方の病院や老人介護施設、保育所などへの転職を考えると資格保有者は優遇される可能性が高いでしょう。医療や福祉、教育など人材不足で仕事が探しやすい国家資格として、例をご紹介します。
・医師、看護師
・社会福祉士、介護福祉士
・調理師
・保育士
他にも、宅地建物取引士や旅行業務取扱管理者など、事業所への設置義務がある資格も不動産や観光業への転職活動の際に、アピールポイントとなる資格といえます。
資格やスキルもない場合、就職支援付きのスクールで知識を習得して、地方転職を目指してみるのもいいでしょう。たとえば、高知県にある「学舎さくら」では、未経験からITエンジニアを目指し、高知県内での就職活動を目指す10代~20代を対象に、就職支援付きプログラミングスクールを運営しています。オンライン講座のため、都会で受講して高知県内での就職を目指すことも可能です。
自分が希望する地域で、目指す業界の就職支援付きスクールがあれば、活用することを検討してみてはいかかでしょうか。
地方転職する上で、住居先の確保は必須です。移住者を集めたい自治体では、移住に関して金銭的な補助を準備していたり、転職支援とセットで支援金制度を設けていたりと移住支援を積極的に行っています。サポート内容は各自治体によって異なりますが、一部をご紹介します。
政府は、地方の人材不足解消などを理由に、地方移住の支援にも力を入れています。
2019年度から2024年度に移住する場合、対象の方は「地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業」の支援が受けられます。
「東京23区の在住者または、東京圏に在住し東京23区へ通勤していた方が、支援対象の地域へ移住し、指定の求人マッチングサイト経由で就業した場合などがあてはまります。支援金は、単身の場合は60万円、2人以上の世帯の場合は100万円です。また、2021年からはテレワークの業務を継続して、地方へ移住する場合も対象となりました。
詳しい要件は、各自治体のホームページを確認しましょう。
自治体によっては、独自の支援や補助を用意している場合もあります。空き家物件の紹介や、定住促進奨励金、住宅建築補助やリフォーム補助など、自治体によって様々な制度があります。例えば不動産業者の少ない地域では、地域の空き家情報を登録する「空き家バンク」制度に取り組んでいます。地域の空洞化を抑制する意味あいもあり、比較的安価な物件も多いです。築年数がたっている物件は、入居者負担で改修が必要な場合もありますが、自治体からの改修の補助金を利用して、自分で新しい住環境の整備を楽しむ方も多いようです。
自治体の支援制度は、自分が対象になっているものがあれば、有効活用しましょう。
地方転職では、地域によって求人の探し方や支援内容が異なります。ですが、情報収集が大事なのはどの地域でも同じです。求人サイトや自治体の制度など、希望地域にはどのような求人やサポートがあるのか確認し、自分がイメージするライフワークバランスの実現への第一歩としてスタートしましょう。
現在は、政府や自治体・民間の求人サイトなど、地方転職へのサポートが充実しています。まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
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